間違いなく 面白い!お薦め!
この作法は、藤沢作品の中では始めての試みです。
一つの町を舞台に、そこの表店、裏店に住む町民一人一人の日常の出来事を、哀歓、人情の機微で順々に進めていく。
そこに登場するのは、小間物屋の若旦那、飲み屋の女将、ご隠居さん、お妾さん、飲んべえお父のしっかり長女、油屋の人の良い旦那、胸の大きな隣の後家さん、泣かせる盗人等など。
一つ一つの話は別々に完結しているが、同じ町内の話なのですべての人物が何かしら繋がっている。12話くらいの物語だが、どれも笑って、泣いて、怒って、哀しんで、ほろっとさせる小編ばかり。藤沢周平さん60歳の作品ですから、登場人物が悪党でもどこか憎めない部分を持たせており、それがなんともいえない味で、ほっとします。
特にお薦めは
1.「約束」・・これには泣かされます。そこまでしなくとも・・・・
2.「乳房」・・世間知らずの若妻にハラハラ、ドキドキさせられます。
■お薦め度:★★★★★(これは間違いなく、面白い!)
切なく楽しい
藤沢「市井物」の大傑作である。「市井物」の傑作で短編集というとまずは「橋ものがたり」があげられるが、これはまたそれとは一味違う。本所深川、架空の町「しぐれ町」を舞台に、気のいい大家、情報通の書役、夫婦仲が醒めてしまった中堅商人、大人ぶる少女、浮気妻を許してしまう職人、浮気の虫を抑えきれない若旦那、等々。ときには主役に、ときには脇役で出てくる町の人々を描いている。私たちは読んでいる間はしぐれ町の住人になる。そして、「切ない」人生を共に「楽しむ」のである。たとえば、胸の小さい若奥さんの話「乳房」が私にはとても切ない。おさよは夫に浮気をされてどうしても許す事ができない。飲み屋の主人おろくはそのおさよにこういう。「男なんてものは、土台そんなにりっぱなものじゃないんだよ。あんたが考えるほどにはね。そして今にわかるが…」「女だって、そんなにりっぱなものじゃないのさ。」おさよのくるくる回る感情が切なくて楽しい。
実際に地図を......
『しぐれ町』を舞台にした『人情物語』 角度を変えた視点から登場人物を見れるという『おもしろさ』がなんとも言えない程おもしろいですね。絶対に『名作』です。 実際に地図を作ったらおもしろいかも?
本所しぐれ町物語
短編集。一つの店の住人の生活が各話に流れるように組み込まれている遊びが楽しい。同じ登場人物を別の角度から眺められる。藤沢作品によく見られる、静かだが思わず吹き出してしまうようなおっとりしたユーモアが随所にちりばめられている。 納められている一作一作は、食物に例えれば、小ぶりながら上品な和菓子のように嗜みつつ惜しみつつ楽しみたい作品ばかりだ。秋の夜長に床の中や居間でくつろいでゆっくり読むも良し、忙しい一日の始まる前や終わった後に、インテルメッツォとして通勤電車で読むも良し。いずれにせよ、疲れた頭を和ませてくれ、日本に生まれて良かったと思う瞬間を与えてくれる。
しぐれ町の地図と人別帳ができそう
本所には「しぐれ町」という街はないのだそうだけれど、いかにもありそうなのは、大家の清兵衛さんや書き役の万平さんをはじめとした町内の人々がつぎつぎに登場する十二の物語が、いかにもありそうな出来事を情趣深く、自分もそこに入っていきたくなるように描いてくれる所為だと思う。三毛猫なんかは、蹴飛ばされたり、そっと道を横切ったりしながら、タイトルにまで四回も登場する。 街と人を愛しく感ずるしみじみとしたオムニバス。この物語を読んで、しぐれ町の地図と人別帳ができそうな気がする。
新潮社
龍を見た男 (新潮文庫) 神隠し (新潮文庫) 冤罪 (新潮文庫) 霜の朝 (新潮文庫) 闇の穴 (新潮文庫)
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