墨攻



墨攻
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まずまず良作

同名タイトルの劇画と映画を元に書かれたエンターテイメント小説。
墨『攻』とタイトルで書かれているが、主人公は防衛側である。本作品が最初、と言う人物は誤解なきように。
また、蛇足ではあるが『墨家』と言うのは本来思想である。本作品はエンターテイメントのため軍事に特化された書き方をしているが、革離以外の墨家全体が傭兵のように見えてしまうのが少し気になった。
閑話休題。防衛戦と言うものは作品にしにくく、敵の攻撃に対しての反撃のシーンが中心となり、主導権が主役側に存在しない、という点で拘束が多い。また、防衛戦を舞台にした作品での欠点である、攻撃側の将軍が優秀すぎると主人公が負けてしまい、無能すぎると主人公の凄さが際立たない、と言う問題点がある。
本作品でも敵の攻撃に技巧を凝らす事ができず、主人公が個人的武勇を見せる回数に対して集団戦闘部分が浅い。結果として主人公個人の活劇小説の部分が目立ってしまう。
また、革離以外の味方の影も薄く、顔の見える脇役がいない。結果敵も味方も個性が薄く、主人公個人の魅力だけで作品を引っ張らねばならなくなってしまっている。
幸い、主人公の革離は癖はあるが魅力ある人物として描かれているので、作品として破綻はしていないが、主人公以外の掘り込みが浅くなってしまったのは否定できないだろう。
劇画や映画が元である以上、絵になるシーンである主人公個人の強さを見せるシーンがあるのはやむを得ないが、文章でしか書けない心理的な部分や、敵味方を問わず、代わりのきかない、失われて惜しい脇役という存在が欠けているのが残念である。
とは言え純粋にエンターテイメント作品としては面白く、一気に読みきらせる筆力はある。最後の部分はやや蛇足であったように思われる(遠くから城に人影が近づいてくる、で締めた方が読後感はよいと思う)ものの、活劇小説としては良作と言える。



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